こんな話を聞いたことがあります。
小学3年生の女の子が、ある日学校の帰り道で早咲きスミレが咲いているのに気づき、そのスミレをお母さんにと思い、摘んで家に帰り「お母さん これ」と母親にさし出しました。
この時母親は何と言ったか。
「今忙しいの だめ」といったというのです。
どうしてこの時に、「まあ きれいね」と言ってあげられなかったのか。
マア キレイネ 六文字
イマ イソガシイノ 十文字
で、忙しいのであれば「マア キレイネ」と言った方が時間は省けるのです。
その一言で娘さんはきっと落胆したに違いありません。
高橋系吾さんの「その一言」という詩があります。
その一言で励まされ
その一言で夢を持ち
その一言で腹が立ち
その一言でがっかりし
その一言で泣かされる
ほんのわずかな一言が
不思議に大きな力を持つ
ほんのちょっとの一言で
不思議な大きな力を持つ、ほんのちょっとの一言が、どれだけ成長の糧になりその人が育っていったか。
仕事柄多くの部下、仲間と接し、失敗も幾つも体験してきましたが、「その一言」を実感しています。
部下の育成、子供の教育とはそういったことではないのでしょうか。
今一つ、先輩から教わった、「仮面の話」?という逸話があります。
中世のヨーロッパの小さな町の話ですが、一人の女性がある男性に恋をしました。
好きで好きでたまりません。
しかし彼女は彼が好むような性格、風貌ではありませんでした。
それでも、彼女は諦めることができず、ある日彼が好む性格、風貌の仮面をかぶることを決意しました。
そして彼に愛されたく、必死で、毎日、毎日その仮面をかぶり、その性格、風貌で振る舞いつきあうこととしました。
何カ月が過ぎ、彼からプロポーズを受けることになりました。
純真な彼女は悩みます。自分は仮面をかぶってつきあっている。本当の自分は違うのだと。
彼女は思い切って泣きながら彼に打ち明けることにしました。そして彼の前で仮面を取ることにしました。
するとどうでしょう、驚いたことに仮面を取った真実の彼女は全く仮面と同じ風貌、性格をしていました。
彼は言います。
「どうしたの 真実の君は同じだよ」と。そして彼女は彼と結婚をして幸せな家庭を築いたとのことです。
人が階段を上り大きく成長するとき、「化ける」とも言います。
その時は、目指す役割の力量がなくても、その役割の力量を夢見、自分を信じ、目指すその人を演じ、演じ切ることによりその力量を得ることがあります。
歌舞伎界における襲名、大相撲における番付昇進、映画界等で主役に抜擢される等。
小職の長年の職場経験でも、驚くほど化けて「人が育つ」瞬間を見てきました。
Office Life Design
代表 岡 靖弘